1on1ミーティングを始めたけど、どうもしっくりこないな、、
これは本当によくある話です。 1on1を始めた当初はほとんどの人がそう感じるのではないでしょうか?しかしその原因は十人十色。そこがまた難しいところです。 そこで、多様な企業様で1on1導入のお手伝いをしてきた当社が、1on1導入初期のモヤモヤを乗り越える有効な手段をご案内いたします。それはズバリ、オリジナルの治具(ジグ)を作ることです。治具とは、加工物を固定して、位置決めをしたり、加工しやすくしたりする補助工具のことを指します。
こんなやつです。
もちろん、ここで作りたいのはイラストのような工具ではありません。とはいえ補助具としての性質がとても似ているので比喩的にそう呼んでいます。治具は一見すると「なんじゃこりゃ??」というものが多いのですが、使ってみると作業が簡単に、かつ正確になり、とてもはかどります。
昨今では、HRテックと呼ばれるシステムがその機能を備えていることがあります。しかし、システム導入とまでいかなくても、手作りで十分にその機能を補えます。この記事は、以下のような方のために書いています。
- 1on1を始めたいけど不安なマネージャー
- 1on1で何を話したら良いのかわからない上司と部下
- 1on1を定着させたい経営者様、人事担当者様
この記事を読むことで、1on1で役に立つオリジナルの治具を作る方法を知り、それを活用して、スムーズに、正確に、目的に向かった1on1を進めることができるようになるでしょう。
オリジナル 1on1ミーティング用治具(ジグ)の作り方
まずは目的を確認
1on1ミーティングは目的ではなく手段です。 では目的はなんですか?あなたはなぜ1on1ミーティングをやろうと思ったのですか?1on1ミーティングをすることでどうなりたいのですか?改めてじっくり考えてみてください。できれは言語化してください。治具はそこに導くための作業を補助するものなので、目的が何であるかがとても大事になります。
自分たちの現在地を確認
目的を明確にしたら、次はそれに対しての自分たちの現在地を確認してみましょう。ここで大事なのは、同じ社内であっても、部署によって現在地はだいぶ違うということです。例えば、全社的な1on1の目的が「すべての社員が自らキャリアを切り開けるようにする。」であった場合。すでにそれに近い状況になっている部署もあれば、程遠い部署もあるでしょう。もっと言えば同じ部署の中でも人によります。だから効果的な1on1ミーティングがどんなものであるのかは部署ごと、人ごとに違います。目的に対して自分たちの現状どうなのか?そこが出発点になります。このことについては別の記事に詳しく書いていますのでご参照ください。
やりたい1on1の妨げになる事象を特定
目的地と現在地が分かったら、どんな1on1ミーティングをやったら良いのか見えてきます。目的地は同じでも現在地はそれぞれ違いますので、それぞれ違った1on1になって然りです。ですからそこで直面する課題もそれぞれです。
例えば、目的は「すべての社員が自らキャリアを切り開けるようにする。」に設定したとしましょう。その場合、普段の上司と部下のコミニケーションがとても少ない部署であれば、まずはお互いを知り合うことが大事になります。それに対して、お互いよく知っているが、普段のコミュニケーションはほとんどが指示命令という部署では、上司の喋りすぎや部下の萎縮を克服しなければなりません。あるいは部下たちの視野が狭くなりがちな部署では、視野を拡げてやる必要があるでしょう。このように、矯正すべきネガティブポイントも部署ごとに、あるいは上司と部下の組み合わせごとに違うのです。それを特定していきましょう。
オリジナルの治具を作ってみよう
特定した課題に応じて、それを矯正したり、サポートしたりする仕組みを作っていきましょう。治具の形式や形状に決まりはありません。その場に必要な矯正やサポートができるものであれば何でもokです。なおかつ自分たちにとって使いやすいものが良いですね。治具は1on1の取り組みを始める前に作ってもいいですし、始めてから必要に応じて作ってもいいです。途中で改良を加えることも必要でしょう。前述のように、目的に対しての現在地は各々違います。組織文化や人間関係だけでなく、就労形態、PC環境、そのスキルレベルなどなど、、職場によってまちまちでしょう。頭を柔らかくして自分たちに合ったオリジナルの治具を考案してみましょう。会社全体ではなく、その部署だけ、あるいは自分たちにだけに合ったもので良いのです。むしろその方が気の効いたものができて良いのです。
具体的にはどんなものなんですか?
治具の具体例
1つの例をご紹介します。ある会社のある部署が自分たちのために作った治具です。治具の本体を見る前に、この治具の背景等を見ていきましょう。
背景
中規模の製造業の会社。工場現場を抱ている。若手の離職率が高く問題になっている。離職する若手の動機は様々だが、仕事に行き詰まっていたり、人間関係に悩んでいたり、将来に不安を覚えたりしているようだ。
目的
若手が希望をもって気持ちよく働ける会社になりたい。そのための手段の1つとして1on1ミーティングを導入しよう。
現在地
特に、ここ「制作部」ではベテラン社員と若手社員の年齢差が大きく、仕事に対する考え方にも大きな乖離がある。お互いにコミュニケーションも取りにくい。仕事以外のことはほとんど話をしない。部長も課長も職人気質で技術には強いこだわりがある。ベテランや管理職はITリテラシーが高くない。
1on1の課題を特定
全社に1on1ミーティングを導入することで、上司と部下で定期的に話す時間を設けたが、「制作部」では以下のように、目的に対してネガティブな状況が見受けられる。
- お互いに緊張していて硬い
- 話題が見つからない
- 上司が持論を語って終わることが多い
- 部下は本音を話していない
- 上司はどう始めてどう終わっていいのが分からない
そこで、考案したのがこの治具。A4で印刷してラミネート加工し、1on1ミーティングする時にテーブルの上に置いて使います。
使い方
- マップをテーブルの上に置き二人で見ながら進めます。
- 交互にアイスブレークの話題を1つ選び30秒ほどで話します。
- 二人で今日の1on1で意識することをマップから選び指差呼称します。
- 前回どんな話をしたか3分程度で振り返ります。
- 部下が今回の話したいことをマップの中から選びます。
- 本題に入る時、上司は入口欄に書いてあるお決まりのセリフを言います。
- 話を締める時、上司は出口欄書いてあるお決まりのセリフを言います。
まとめ
いかがでしょうか。「何だこれ?こんなのウチでは使えないよ、、」と思われたのでは?でもこの会社の制作部の方にとっては、とても便利なものなのです。治具とはそういうものです。自分たちにぴったりなものをオリジナルで作って調整していきましょう。
今回ご紹介したものの他にも、
- チャットワークの概要欄を利用して定形の事前質問を設定したり
- スプレッドシートで1on1のフィードバックを共有したり
- YWTなどのフォーマットに基づいた事前の書き込みを基に進めたり
- 上司から事前にメールでアジェンダを送ったり
治具のアイデアは現場の数だけあります。自分たちの目的や現在地に自覚的になり、自分たちで使うツールやその運用を工夫して治具を作り、効果的な1on1に役立ててください。こんな記事も書いていますのでご参照ください。
追伸
どの現場でもそうですが、治具を使うのは最初のうちだけです。途中から使わなくなることが多いです。その必要がなくなるからです。最初は治具をあてなければ書けなかった線が、フリーハンドで書けるようになったからです。その方が活き活きとした絵が書けたりします。1on1がその域に達したのなら、もう治具を使う必要はありません。文化として根付いたと言えるのかもしれません。
コメント