■【図解】1on1の苦痛の原因を徹底解説 プロが教える目的に適った1on1施策の進め方

話が続かないんだよね。

うちの部署には必要ないです。

上司の話ばかり聞かされて苦痛です

これ、なんか意味あるのかな?

なにか困ってることある? 特にありません。で終了。。

1on1ミーティングを始めたばかりの上司と部下にインタビューすると大体こんな感じのコメントが帰ってきます。そのままにしていたら1on1は形骸化して自然消滅してしまうでしょう。1on1をすること自体が目的では無いのですが、1on1をやることで成し遂げたかった真の目的も果たされず、何も変わらないのでは寂しい限りです。

上記のような苦痛がどういったメカニズムで発生するのか、そして、それらについてどう対処すれば良いのか。6年間にわたり年間400回以上の1on1セッションを実施し、多様な現場で1on1導入を見守ってきた私が、オリジナルの理論(1on1ミーティングのダイナミクス)に基づき、なるべくシンプルに図解します。

このブログを読むことで、1on1にまつわるモヤモヤが解消され、今後の目指すべき方向が見つかり、そこに向かって1on1施策をコントロールすることができるようになります。上司の方だけでなく、部下の方、人事部の方、経営者の方にも読んでいただき、応用していただければ嬉しいです。

1on1ミーティングのダイナミクスとは

下の表は、職場の状態を 次の6つの視点で捉えています。

部下のスタンス

部下はどんな認識で仕事に取り組んでいるのか

②上司のスタンス

上司はどんな意識をもって部下の仕事をサポートしているのか

③組織のメリット

会社(あるいは上司)は部下の仕事のサポートを通じて何を求めているのか

④部下のメリット

部下は仕事に何を求めているのか

⑤1on1で行われること

1on1の中では主に何が行われるのか

⑥1on1はどんな場か?

上司、部下、会社は1on1をどんな場として認識しているのだろうか

この6つの視点で観測し、各々の視点に観られる性質の双極性をグラデーションであらわしたものです。これを基にして相互作用を考察していきます。また最初に大事なポイントとして述べておきますが、すべての視点において、グラデーションのどこにプロットされようが、それ自体に良いも悪いもありません。ただ、各視点のグラデーションのレベルが横一線に揃っているときには、安定していて、苦痛や違和感はありません。その反対に、 グラデーションのレベルが不揃いな場合には、その不揃いの程度に応じて苦痛やモヤモヤが発生します。それが前述のような上司と部下の苦言の背景になります。

苦痛別の分析と対処法

話が続かないんだよね。。

下記のような状況の時に、そうなりがちです。

状況の解説

人材育成の最初の段階では、どうしても上司が部下に教え込む事がメインになります。 もちろん悪いことではありません。わからないことは1on1で上司が教えてくれる。そんな仕組みがある会社なら安心して働けそうです。求人する際のアピールにもなるでしょう。 不慣れな社員による失敗が減り早期の即戦力化が図れます。1on1の中では主にティーチングが行われ、1on1は「上司が部下の問題を解決する場」として認識されています。しかし、ある時、管理職研修で、「上司は部下の話を傾聴しなさい」と教えられます。実際にはその背景も含め、ちゃんと教えてもらったはずですが、上司が受け取ってきたのは「傾聴が大事」というメッセージだけ。それをいきなり現場で実行するとグラデーションのレベルが乱れます。仕事を覚えようとするスタンスの部下に対して傾聴しようとする上司。話が続かないのも当然です。

どうしたら良いか

傾聴が大事だという研修の背景には、イノベーションが起こりやすい社風を醸成し環境の変化に対応して生き残っていきたいという会社の目論見があるかもしれません。そのためには会社や上司は短期的な効率の良さをある程度損なう覚悟が必要です。その覚悟はありますか? また、社員がもっとやりがいを持って活き活きと働いてほしいという思いがあるかもしれません。その時、部下にはただ教えられたことをやればいい「気楽さ」を手放す覚悟が必要です。その厳しさと必要性を部下に説いていますか? さらに上司と部下の両方にコーチングからメリットを引き出すスキルと心構えが必要であり、加えて1on1の場を「部下が自らの可能性を伸ばす場である」と再定義する必要があります。そうやって再定義された1on1の場で部下は主体者として考えを進化させ、問題を解消していきます。そこには「話が続かない」ということはありあせん。

とはいえ、人がスタンスを変えたり、今あるメリットを手放すことは簡単ではありません。上記のように一足飛びにグラデーションのレベルを変えるのには、だいぶ無理があるでしょう。まずは自分たちの現在地を自覚し、意図的に段階的に グラデーションレベルをコントロールしていくことが大事です。

上司の話ばかり聞かされて苦痛です

下記のような状況かもしれません。

状況の説明

部下が実力をつけてきました。事業に自ら参画していくスタンスも持ち合わせています。部下は上司と協力して、より質の高い仕事をしたいと思っています。1on1はそのための場であると上司と部下の認識は一致しています。会社もそんな1on1を奨励しています。ところが、上司は部下がまだ未熟だった頃の感覚をずっと引きずっています。そのため、ついつい指示命令をしてしまいます。部下のやり方では効率が悪いと感じてしまうのです。確かにそういうケースもあります。本来なら1on1の場では上司と部下が一緒に考える作戦会議をしたいのですが、実際は上司から部下へのティーチングの時間がほとんどです。部下からすれば、 自分にも考えがあるのに上司の話ばかり聞かされて苦痛だ。。と感じてしまいます。

どうしたら良いか

上司と部下の実力差がどの程度のものかにもよりますが、部下に事業への参画のスタンスがあるのなら、上司は部下の考えを最初から否定するのではなく、なんでそう思ったのか深掘り質問してみると良いでしょう。思ったよりしっかりしているんだなということに気づくケースが多いようです。部下のアイデアが思わぬイノベーションに繋がることもあるでしょう。昔の頼りなかった頃の残像が少しづつ修正されていきます。また、マネージャーとして短期的な業務効率を求めるのは当然のことですが、それに加えて長期的な人財育成も大事な仕事であり、しっかりと視野に入れるべきだと思います。加えて会社や人事部はその手腕や功績に対する評価を重んじることで、グラデーションのレベルが揃ってきます。

何か困ってることある? 特にありません。

よくあるくだりですが、これには以下のような背景があるかもしれません。

状況説明

会社は多様性や社員の働きがいに価値を見出していて、上司も部下もそれに賛同しています。部下は主体的に仕事に取り組み、上司は部下の話を傾聴するスタンスでサポートしています。上司はコーチングを学び1on1の中で実施しようと試みます。しかし、あの悲しいくだりが繰り返される。。「何か困ったことある? 特にありません」。。部下は仕事に主体的に取り組むスタンスを持っています。しかし、自分が1on1で上司を利用して自らの可能性を伸ばすことなど、良いも悪いもなく発想自体がない。上司の方も会社にそういう機会があるなんて想像すらできない。という状況です。

つまり1つの視点だけ、他とレベルが揃っていいないのです。「1on1はどんな場であるか?」という視点です。最初にも述べましたが、1on1がどんな場であっても良いのです。しかし、他の視点とレベルが合っていないと、意図したメリットを十分に享受できません。なんとなく1on1は上司が部下の問題を解決する場だと認識してるのです。それは、そう定義づけられているわけでもないのですが、今までの常識とか、なんとなく雰囲気でそう認識しているのです。せっかくその他の視点のレベルを変えてきたのに。

また、このグラデーションレベルの配列になった場合、逆の方向からの苦痛が発生することがあります。それは、「なにか困ったことある?」と聞いた時に、部下から不平不満を滔々とぶつけられ振り回されてしまう。ということです。この配列では部下は自分の意見をはっきり言いますし、上司はそれを傾聴します。その時、1on1は上司が部下の問題を解決する場である。と認識していると、上司はその不満を自分が解消しなければならないと考えるし、部下もそれが当然と考えます。これについての対処法は別の記事で詳しく書いていますのでご参照ください。

どうしたら良いのか

もし、前述のように、1on1はどんな場かの視点を除き、他の視点のグラデーションのレベルがほぼ揃っているのなら、「1on1は部下が自分の可能性を伸ばす場である」と、明確に再定義してしまいましょう。得たいメリットや意図のリマインドとセットで宣言すべきです。「上司は部下の問題を解決しなければいけない」という観念は深く根付いていいます。組織の中ではそれが求められているし実際に必要な事です。ですからこの再定義も理解しづらかったりします。だからこそ、あえて明確に宣言したいのです。我々にとって1on1はこういう場だ!と。1on1以外のすべてのコミュニケーションがそれに縛られる必要はありません。しかし1on1は部下が自分の可能性を伸ばす場なのだと。

意図と共に1on1の再定義が全員の腑に落ちたのなら、1on1のテーマは部下が持ってくるようになります。部下が自ら「1on1を利用し、上司を利用して、自分の可能性を伸ばすんだ!」と本当に思えたなら、そして、会社も上司も一緒になってそれに加勢してくれるのなら、話したいことは溢れるように出てくるでしょう。「特にありません、、」とはならないはずです。

まとめ

今回ご紹介した表「1on1ミーティングのダイナミクス」は、1on1にまつわる主要な視点を単純化して、各々の相互作用を考察しながら1on1の苦痛の原因を分析し、コントロール感を持って変化を起こしていく為のツールです。今回は3つの苦痛について考察しましたが、その他の不具合についてもこの表をもとに考え、対策していくことができます。

繰り返しになりますが、各々の視点について、それ単体で良いも悪いもありません。ただ、横のレベルを揃えていくことで苦痛を予防し意図したメリットが出やすくなります。読者の皆さんにおかれましては、是非ご自身の会社やチームの状況をよく観察して、この表に照らし合わせ、苦痛の原因や対処法を考察してみてださい。

私がいろんな会社様、いろんな部署に関わらせていただいて思うのは、このダイナミクスの視点で見た時、状況は千差万別だということです。まず会社ごとに大きく違います。そして会社ごとの傾向はあるものの、部署ごとにもだいぶ違います。さらには同じ会社の同じ部署でも上司と部下の組み合わせによって違います。ですから、その会社が理想とする状況を作っていく(=在りたいグラデーションのレベルを設定し、それに合わせていく)ためには、なるべく小さい単位(部署とかチームとか)で、個別に具体的に考察し対応していく必要があります。すると上司側の研修だけではなく、部下側にも学びが必要なケースがとても多いことに気づくと思います。さらには、経営層も認識そろえる必要があるかもしれません。

何かを変えようとすれば、どうしても苦痛を伴います。これはとても厄介で、誰かから何かを教えてもらえば解消するという性質のものではありません。このことを「技術低問題ではなく、適応課題である」といいます。でも正体を知っていれば、そして、その先に目指すものが見えていれば、怯むことなく苦痛と向き合い、少しはコントロールしやすくなるでしょう。この記事がその一助になれば嬉しいです。

追伸

向きあってコントロールするといっても、具体的にどうしたらよいのでしょうか?当社の経験と実績から導きたした具体的な施策がこちらです。

※クリックするとリンクの記事に飛べますので興味のある方は覗いてみてください。

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この記事を書いた人

経営者・管理職・リーダーを対象に年間400回以上の1on1を実施。あの手この手で企業の対話文化を盛り上げています。静岡に住みながら、主にzoomで全国のクライアント様をサポート。伺いして集合研修をおこなったり、アウトドアでの研修も提案しています。

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