■新入社員退職の背後に隠れる驚きのコスト

皆さんは、一人の新入社員が会社を退職することで、企業がどれだけの金銭的ロスを被るか知っていますか?一見単純な退職の背後には、多くの隠れたコストが存在します。きっと予想以上です。金額であらわすのが一番ピンときやすいと思います。これを知ることで、マネージャーも、新人も、退職の重大さを解像度高く認識していてだければと思います。

まずは金銭的なロスを次の4つに分類して羅列していきます。

1.外部に支払った金額

2.内部の時間と労力を換算した金額

3.一人前になるまでの人件費

4.後任が育つまでの機会損失額

1.外部に支払った金額

これは比較的見えやすい金額かもしれません。

  • 求人広告費
  • 人材紹介料
  • 採用選考の為の場所のレンタル費用
  • 外部研修費
  • 支給する制服や備品の費用

2.内部の時間と労力を換算した金額

これらに費やした時間に、その人の時間単価をかけ合わせると、かなりの金額になることがわかります。ご自身の時間単価の意識が無いと見落としてしまうコストです。

  • 求人要件確定の為の打ち合わせ(人事部・事業部・経営層)
  • 求人広告の手配(人事部)
  • 人材紹介会社との打ち合わせ(人事部)
  • 応募者との連絡(人事部)
  • 採用面接(人事部・事業部・経営層)
  • 採用選考(人事部・事業部・経営層)
  • 採用/不採用通知(人事部)
  • 入社手続き(人事部)
  • 新人研修プログラム(人事部・事業部)
  • OJT(事業部)
  • 退社の以降を受けた面談(事業部・人事部)
  • 退社手続き(人事部)

3.一人前になるまでの人件費

例えば1年で一人前になるとした場合、徐々に成長して1年後に一人前になります。その時にやめてしまったとしましょう。半人前の時期でもそれなりの貢献をしますので、1年分まるまるの人件費がロスではありません。便宜的に半年分ぐらいがロスだったと考えます。

*人件費は本人に払う給料だけではないのです。この辺も見落としがちです。条件によりますが給与の1.4倍から2倍ぐらいが、会社の負担する人件費になることが多いと思います。

  • 給与
  • ボーナス
  • 交通費
  • 家賃補助等各種手当
  • 健康保険料会社負担分
  • 厚生年金会社負担分
  • 雇用保険会社負担分

各6ヶ月分

4.後任が育つまでの機会損失額

一人前の働きをする社員がいてくれたら生産したであろう用益(仮に給料の3倍)が、後任が一人前になる1年後まで失われます。とはいえ後任も一年を通じて徐々に成長し、その間にも用益を生み出すので、まるまる1年分の機会損失ではなく、6ヶ月の損失と計算しましょう。

  • 給与x3倍x6ヶ月

試算してみましょう

以下のような設定で一人が辞めてしまった場合の金額のロスをざっくり試算してみましょう。

  • 月給20万円の新入社員
  • 新卒で10人採用した
  • 1年で一人前になる
  • 一人前とは給与の3倍(月60万円)の働きをすること
  • ひとりが、ちょうど1年でやめてしまった。

■外部に支払った金額

  • 求人広告費 100万円
  • 就職説明会などの場所のレンタルなど 20万円
  • 外部研修費 80万円
  • 支給する制服や備品の費用 20万円 

合計220万円÷10名=22万円

■内部の時間と労力を換算した金額

  • 採用担当スタッフ 年収 400万円 x 1.5 x 1名 100%=600万円
  • 人事部管理職   年収 700万円 x 1.5 x 1名 30%=315万円
  • 事業部責任者     年収 700万円 x 1.5 x 5名 3%=158万円
  • 経営層      年収1,000万円 x 1.5 x3名 2%=90万円

合計1,163万円÷10名=116万円

  • 事業部OJT担当者 年収400万円 x 1.5 x 1名 15%=90万円

116万円+90万円=206万円

■一人前になるまでの人件費

  • 給与 20万円/月 
  • 家賃補助等各種手当 4万円/月 
  • 健康保険料会社負担分 1万円/月
  • 厚生年金会社負担分  18,000円/月
  • 雇用保険会社負担分  1,900円/月
  • 労災保険 1,200円/月

271,100円/月 x 12ヶ月 ÷ 2 = 1,626,600円 約163万円

■後任が育つまでの機会損失

月給20万円 x 3ヶ月 x 12ヶ月÷ 2 = 360万円

損失額は合計で751万円となります!!

機会損失はコストではないので、これを除外したとしても

391万円のコストが水の泡になったことになります。

では391万の利益を出すのにどれぐらいの売上が必要ですか?

391万円は純粋にかかったコストです。391万円の利益を出すためには、いくらの売上が必要でしょうか? 仮に利益率が10%の事業をされているなら3,910万円の売上が必要です。つまり上記のような条件で新入社員が辞めた場合には、3,910万円の売上が吹っ飛んだのと同じインパクトがあるのです。

まとめ

試算の金額は会社によって、条件によって、大きな違いがあると思います。拾えていないコストも他にもたくさんあると思いますが、そこはご容赦ください。ただ、すごいロスなんだ!ということをおわかりいただき、もし自社のケースを試算してみようと思われた時には、参考にしていただけたら嬉しいです。

新入社員が辞めてしまった。。こんな話は今どき当たり前になり過ぎて、あまり気にしない空気すら感じます。しかし、昔も今も、これからの未来にはもっと強烈に、経営に対して大きなマイナスのインパクトを与えるでしょう。もちろん仕方がないケースもあります。しかしコミュニケーション不足による相互の不理解や、認識のズレから生じるハラスメントなどで若い退職者を出してしまうことは、事業を継続して行くうえで、今後最も避けなければならないことではないでしょうか。

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この記事を書いた人

経営者・管理職・リーダーを対象に年間400回以上の1on1を実施。あの手この手で企業の対話文化を盛り上げています。静岡に住みながら、主にzoomで全国のクライアント様をサポート。伺いして集合研修をおこなったり、アウトドアでの研修も提案しています。

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