当たり前になってきたスピード退社
近年、新入社員のスピード退社が社会問題化しています。若者の間では、何度も転職することが当たり前と考えられるようになりました。このような状況下で、新入社員が会社を早々に去ることも一般的になりつつあります。
ここは私の居場所ではないという感覚
一概にはいえませんが、新入社員が会社を早期に離れる背景には、「ここは私の居場所ではない」という感覚があるのではないでしょうか。立派な会社だと思うし、上司や先輩もすごいと思う。でも自分は何も出来ないし、ホントの自分を出したらヤバいから猫かぶってたほうが良さそうだ。そんなふうに感じていたら活力が湧かないのも当然です。そして彼らは自分の居場所がここではないと感じ、そこを去ることを選択します。
ここが私の居場所と思えるためには
アドラー心理学によれば、健康な精神状態を保つ条件として以下の3つをあげています。
- 自己受容:ダメなところもあるがそれも含めて自分で自分を認められる感覚
- 他者信頼:周りの人は敵ではなく、そんな自分を受け入れてくれる仲間だと思える感覚
- 貢献感:その仲間に自分は自分の特性を活かして貢献できていると思える感覚
新入社員がこの感覚を持つことができれば、ここが私の居場所だと感じ、落ち着いて本来の力を発揮していくことになります。ここに居る私が好き。周りの人は大事な仲間。大事な仲間に私には貢献できる。たからここが私の居場所。そんな状態を望むのは新入社員に限らず全ての人の本能だと思います。
提案したい具体的施策
では、どうしたら新入社員が会社の中で自己受容・他者信頼・貢献感を強めることが出来るでしょうか。その条件や手法はいくらでもあります。その中でも簡単で、且つ効果の高いものを2つご紹介します。
①研修プログラムの中で
新入社員研修では、会社の歴史や企業理念、会社が大切にしている価値観や行動規範などをみっちりと教え込むことでしょう。これはとても大事なことだと思います。ただその最後に、少しだけ時間をとって実施して欲しいことがあります。それは、これまでとは反対に会社が新入社員の個々のアイデンティティを知ろうとする時間です。何も難しいことはありません。リラックスした雰囲気を作り「〇〇さんが、うれしいと思うのはどんな時?」「こんな困難な状況がありますが、〇〇さんだったらどうしますか?」みたいな質問を投げかけます。本音で話してもらい、よく聴きましょう。深掘り質問をしてもいいでしょう。 もちろん正解も不正解もありませんので、ただただ受け入れます。このやり取りを通じて新入社員には重要なメッセージが伝わります。それは、「会社はあなたを個性的な存在として認識し、認めてますよ。」という言外のメッセージです。これにより前述の自己受容・他者信頼の感覚を高めることがでします。新入社員が大勢いる場合は4人ぐらいのグループに分けて、各々のグループに先輩社員を配置してワークを進めると良いと思います。
②OJTの中で
配属されればOJTで実際の仕事をみっちりと教え込むことでしょう。仕事は甘くありません。彼らは業界の常識など分かりませんし、間違えたり、遅かったり、教える方も大変です。最初はやってもらった仕事より、教える手間ほうがはるかに多くなります。新入社員もそのことは自覚しているのではないでしょうか。だからこそ、彼らがしてくれた小さな貢献を探して注目してあげるのです。些細なことでいいんです。「ありがとう、助かるよ」みたいな言葉をかけてあげてください。これにより、新入社員は前述の貢献感が高まります。自己受容・他者信頼・貢献感が高まると活力が湧いてきます。その活力はあらゆる困難の克服を可能にします。そうなれば、先輩や上司の厳しい指摘もプラスに捉え成長につなげる事ができます。成長した新入社員は更に会社に貢献し、認められ、ここが自分の居場所だと確信していきます。
まとめ
新入社員のスピード退社を防ぐためには、彼らが会社を自分の居場所だと感じることが重要です。自己受容、他者信頼、貢献感を高めることを意識して新入社員と関わってみましょう。特に大きなコストがかかることではないし、技術的に難しいことでもありません。それで効果は絶大です。新入社員のみならず、みなさんにとっても素敵な体験になると思います。
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