人の話を聴くという職業柄、私はこの話題によく出会います。企業でマネージャーをしていた時代から、何度となく向き合ってきました。そして私自身も会社を辞める側として上司や人事部の方々と話をした経験があります。
部下から「会社を辞めたい」と言われて戸惑っているマネージャーの方に、このブログが何らかのヒントになれば嬉しです。
部下から退職を切り出されたとき、どうしたらいいのか?
もちろん答えは一つでは有りません。模範解答などありません。
下記は、数多くの退職希望者と真剣に向き合い、対話し、その後の状態も追いかけ、試行錯誤してきた私なりの一つのご提案です。私なりのコツと言ってもいいかもしれません。
結論から言います。転職の話を
「お互いの成長のチャンスだと捉えてみてましょう。」ということです。
これは、単に「転職先で頑張れ!」というものではありません。
転職に向き合うプロセスそのものが、退職希望者のみならず、会社にとっても成長のチャンスでもあり、あなた自身の成長のチャンスでもあるので「そのチャンスを活かすことを目的とした対話を進めてみましょう。」ということです。辞める辞めないは一旦横に置いておいて。
退職希望者への対応は考慮すべき要素が多く、そのことがマネージャーを焦らせます。
・理由は何なのか?
・目的は何なのか?
・転職なのか?独立なのか?
・転職先は決まっているのか?これからなのか?
・転職先は同業者なのか、関係ないのか?
・辞めてもらっては困る人なのか、その逆か?
・穴を埋める算段はつくのか?つかないのか?
・後からコンプライアンスで刺される要素があるのか、無いのか?
・誰に話していて、誰は知らないのか?
・同僚への連鎖はあるか?ないか?
・自分の上司の反応はどうか?
・本人にやっていける力があるのか?無理そうなのか?
・ご家族の反応はどうなのか?
・そもそも、本音で話しているのか、建前なのか?
などなど、、
これらによって、具体的にとるべき対応は変わってきます。
しかし焦ってはいけません。
落ち着いて、お互いが視野を広げて、お互いが成長することを目的として、対話を進めるのです。
転職希望をカミングアウトした人は、その時点ですでに何度も自分との対話を繰り返しています。自分は何が嫌なのか?なにがやりたいのか?どうなりたいのか?自分にそれができるだろうか?などなど。何回も何回も。
そして転職サイトに登録したり、面接を受けたりすれば、市場との対話が始まります。どんな会社が、どんな人材を、どんな待遇で求めているのか?自分はそれに応えられるだろうか?そんな対話によって、自分と市場を、今までより数段高い解像度で、幅広く認知することができるようになっています。
それによって彼は、転職を考える前より少し成長しています。この成長を更に促すような対話をするのです。まずは彼の思考の道のりを一緒にたどってみましょう。時系列でアウトプットしてもらうことで、彼の思考はより整理されるでしょう。すると、あなたには見えているけど、彼には見えていないものも分かってきます。例えば、市場のこと、会社のこと、あなたの彼への思い、彼自身の特性などなど。対話の中で分かってきた彼の盲点を、質問してあげたり、情報提供してあげたり、信頼関係があるならフィードバックしてあげたりしましょう。その際、会社を辞める辞めないは一旦おいておいて。
そんな対話の中から、逆に、彼には見えているけど、あなたには見えていなかったものも必ずみつかります。例えば、彼が本当に求めているもの。他のメンバーが感じていること。会社の制度の弱点。方針のズレ。マネジメントの未熟さ。他社の待遇。世間の給与水準などなど。あなた自身も情報をもらい、視野を拡げ、内省するとても良い機会になます。そのことで、会社もあなたも成長できるのです。そこを目的として対話を続けてみましょう。
もしかしたら、少しずつ成長した「彼」と「会社」に、共有ゾーンが見つかるかもしれません。見つからないかもしれません。それはわかりません。ただ間違えなく言えるのは、成長した分だけ良かった。ということです。
退職希望者の建前に過敏に反応して、表面的な取り繕いを重ねても、ろくなことになりません。逆に「辞めると言ったヤツの話など聞かない!」というのも、会社としてもったいないことだと思います。退職希望者の本音は会社にとって最高のフィードバックです。退職希望者からこそ、しっかり話を聴くべきです。
ですから、本音で話せる関係性が大事なのです。退職者からすれば、きれいに建前だけ繕って、面倒を起こさずに消えたいのです。しかしそれでは、共有ゾーンをみつけることは出来ません。あなたと会社の成長にも繋がりません。本音で話せる関係性があれば、あなたも会社も退職希望者から成長のきっかけを掴むことができるのです。
当社では、オンラインによる1on1の指導や、オンラインによるプチセミナー、リアルな研修などを通じ、風通しの良いチームづくりをサポートしています。本音を引き出す退職者様へのインタビューなども承っておりますので、もしよろしければご相談ください。
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