どうも1on1はやったほうが良さそうだ。
うちの会社でもやってみよう。
はい、承知しました。
とはいえ、何から手をつけたらいいのか、、、
まあいいや、とりあえず
”上司は週に一回、部下と話す”
これで行ってみよう!
そんな感じで始めたとしても、最初のうちは一定の成果が出るかもしれません。
しかし時間が時間が経つにつれ、マンネリ化してしまったり、自然消滅してしまったり、、
あれは何だったんだろうな?
なんてことに、、
1on1を充実した活動に育てていくためには、
事前の準備と、始めてからの微調整が必須です。
今回は、企業様への1on1導入をお手伝いしている弊社が
実際にどのようなプロセスで軌道に載せていくのか 、
典型的なパターンと
各ステップのポイントをご案内させていただきます。
目的を決める
まず、目的について整理しておくことが重要です。
目的があるからこそ、それを目指して創意工夫が可能になります。
例えば、
“離職率の低下”を目的にした場合と、
”イノベーションの推進”を目的とした場合では、
1on1のやり方が変わってくるでしょう。
また、
どうも上手く行かない、成果が出ない、、となった時に、
「目指しているのは離職率の低下だよね。」
「そのためには1on1はどうあるべきだろう?」
というように、目的を軸に施策を調整をして行くことができます。
1on1をしていれば、当初の目的とは別の副次的な効果も出てきます。
それはそれで1on1のすばらしいところですので、おおいに享受しましょう。
しかしメインの目的は、しっかり持っておくべきです。
そして、矛盾するようですが、目的は少しずつ変わっても構いません。
むしろ前進すれば見える景色が変わってきますので、目的もそれに合わせて変化していくのが自然だと思います。
今、見える視野で一番重要な事を目的にしましょう。
弊社では具体的に以下のようなプロセスで目的を言語化していきます。
ヒアリング&グループコーチングで方向性を固める
まずは経営者、マネージャー、事務局など、この活動を主導する方々からお話をうかがいます。
1on1をやろうと思った経緯。
ありたい姿。
問題意識や課題。など、
ヒアリングをしながらコーチング的に深掘りしていきます。
活動の真のテーマを見出し、主要メンバーのベクトル合わせます。
社内アンケート
主要メンバーで見出したテーマについて、社員のみなさんはどういう認識なのか調査します。
経営陣から見えている景色と、社員から見えている景色は違うことが多いです。
どこがどのように違うのか、どの部分が共通しているのか。
はっ、とさせられる意見も出てくるかもしれません。
アンケートを踏まえてのグループコーチング
アンケート結果を踏まえて、再度、主要メンバーと話し合います。
そして目的を言語化します。
納得感があり、ワクワク感があり、大多数の人が目指したくなるような言葉をチョイスしていましょう。
やり方を決める
位置づけを決める
目的の言語化ができたら、この活動の位置づけを確認していきます。
ここは非常に大切です。
ここが整理されていなければ、現場が混乱したり、活動が陳腐化したり、定着はおぼつきません。
具体的には
・同じ様な(かぶる)活動はないか?
・相反する活動や方針はないか?
・強制するのかしないのか?
・評価と連動させるのか、させないのか?
などをチェックして整合性を確認し、位置付けをはっきりさせます。
効果的な方法を選択する
ここまでくると目的と位置付けが定まっていますので、それに向けてどんな1on1が効果的なのか具体的に検討することができます。
・誰と誰がやるのがよいか?
・どんな1on1をやるのがよいか?
・どんな頻度でやるのがよいか?
・どれぐらいの時間でやるのがよいか?
・記録はどうするか?
・どこまでを指定して、どこまで各自にまかせるか?
などなど、
ここは本当にたくさんのバリエーションがありますので、目的と、位置付けと、自社の状態を考え合わせ最適と思われる方法をチョイスします。
また、活動が始まってからは、様子を見ながら定期的に見直して微調整していくことが重要です。
最初のうちは、1on1の進め方のフローなどを示してあげると、やりやすいと思います。
ツールを決める
対面で行うのか?ビデオ通話で行うのか?電話で行うのか?
それぞれ良い所がありますので、なるべくすべて使えるようにしておくのが良いと思います。
対面にこだわらず、ビデオ通話や電話の選択肢も残してください。
そのことによって、出張や在宅勤務でもセッションが可能となり実施率が上がります。
また、勤務地の離れた者同士の組み合わせも可能になり、ペアの組み換えなど、目的に向けての打手が拡がります。
1on1セッション自体のツールとは別に、
連絡や、事前記入するフォーマット、記録、フィードバックに何を使うかも決めておきましょう。
1on1セッション以外の時間も、とても重要なのです。
例えば、セッション前に自分で1週間を振り返っている時に重要な気づきがあったり、
セッション後に名案を思いついたりします。
セッション後のチャットのやり取りが、さらに信頼関係を深めたりします。
ですから、どんなツールをどう使うのか。どう組み合わせるか。そこに何を記録するのか。など工夫しましょう。
例えば、
・チャットツールで1on1をする人全員がチャットグループを作り全体連絡用とする。
・ペアは2人だけのチャットグループを作り時間調整、メモ、フィードバックに使う。
・セッション前に*HRテックに今週の振り返りを記入する。
・セッション後にスプレッドシートにポイントをまとめる。
などなど。
最初にしっかりと指定することで、現場ごとのバラツキを防ぎます。
それによって、あとから活動の振り返りもしやすくなりますし、
ペアをチェンジする際の引き継ぎもスムーズになります。
ですから、最初にしっかり決めておきましょう。
*HRテック:ヒューマン・リソース・テクノロジーの略で、人事関連の課題に応えるためのシステムなどをいう。
メンバーに示す
ここまで準備できたら、いよいよ社内に通知します。
社員を巻き込んで活動が定着するかどうか、最初が肝心です。
定着させるためのコツを2つご案内します。
ゴールデンサークルにまとめる
例えば、
こんなふうに説明しだすと、せっかくの新しい取り組みも、人を惹きつける魅力がなくなってしまいます、、、
「当社でも1on1を始めます。」
「1on1とはこういうものです。」
「具体的にはこうやってください。」
「こんな良いことがあります。」
「だからやってみてください。」
なんだか、あまり乗り気になりませんよね、、^^;
社員の皆様を引きつけ、新しい活動に巻き込んでいくためには
ゴールデン・サークルという表現を意識すると大変効果的です。
まず目的から話すのです。
目的⇒戦略⇒戦術
why⇒how⇒what
大義⇒ポリシー⇒施策
こんな順番で伝えることを意識してください。
1.目的を話す
ここまでのプロセスで、既に「目的」は言語化できています。
その目的を掲げるに至った背景も、経営者目線、社員目線、両方から押さえていますよね。
まずはそこから話しましょう。
アンケート結果をシェアするのも効果的でしょう。
2.戦略を話す
前述の「やり方を決める」のプロセスと真摯に向き合ってきたなら、その過程で戦略は練り上がっていると思います。
目的をどのように果たすのか、考え方、コンセプト、価値観、覚悟などを自分の言葉で伝えましょう。
3.戦術を話す
最後に、その戦略に基づいて、具体的な1on1のやり方を話します。
この活動の社内的な位置付けなども、ここで話しておきましょう。
この順番で話すと、聞いている方はグッと引き込まれます。
トップから発信してもらう
殆どの会社はピラミッド型の組織だと思いますが、ピラミッド型の組織で1on1の文化を定着させるということは、実はかなり大変なことです。
ただ単に、みんなでコーチングのスキルを身につければよい、というものではありません。
大袈裟にいうと、会社ごと認識を変えなければならないのです。
部下ってどんな存在なのか?
上司ってどんな存在なのか?
会社のなかで自分ってどんな存在なのか?
AとBではどちらが大事なのか?
会社の中で知らずしらずの内に出来上がった固定概念に揺さぶりをかけなければならないのです。
スキルさえ身につければ上手くいく課題を「技術的問題」といいます。
認識が変わらなければ解消できない課題を「適応課題」といいます。
ピラミッド型組織で1on1を定着させるプロセスには、この「技術的問題」と「適用課題」が混在しています。
直面している課題が「技術的問題」だけなら、トップは、担当者や専門家に任せておけばいいでしょう。
しかし「適応課題」があるのなら、トップ自らがそれに適応して変わる覚悟を示す必要があります。
すべてのメンバーに変化を求められるのはトップだけです。
前述の「目的」「戦略」あたりはトップの口から語ってもらうのが効果的です。
「戦術」にあたる具体的な1on1のやり方は、その後に事務局から伝えれば良いでしょう。
コツを教える
ここまで出来たら、活動に共感し、やる気を見せる社員も出てくるはずです。
社内での関心は、かなり高まっていると思います。
このタイミングで、
社員がつまずくであろうポイントを先回りして伝え、それを克服するコツも教えておきます。
「つまずくであろうポイント」の最たるものが、コーチングです。
もう少し詳しく言うとコーチング的スタンスの違和感です。
ここに向き合うコツを教えておくのが効果的です。
コーチングセミナー
コーチングを学ぶ手段は色々あります。本を読んだり動画を見たりセミナーに参加したり。それらを利用して学ぶのはとても良いことです。
ただ、このタイミングで注意したいのは、
コーチングの技法やノーハウだけを学んでも、上記のつまづきは解消出来ないということ。
むしろ、学べば学ぶほど、大きく、つまずいてしまうかもしれません。
どの会社にも、これまで組織の中で培われてきた上司と部下の上下関係があるとおもいます。
ここにいきなりコーチング的スタンスを持ち込むと、あまりの違和感に上司も部下も気持ち悪さを感じてしまうことがあります。
このタイミングではコーチングの技法やノーハウと同時に、
この違和感にどのように対処していくのか。
そのコツを掴む必要があります。
当社のオンライン研修では、この違和感のマネジメントについても、コツを掴めるようになっています。
上司と部下の関係性はそれぞれの会社で違いますし、同じ会社でも人によって違います。
当然、違和感の度合いも変わってきます。
ですから、オンライン研修では質疑応答の時間を充実させ、個別で具体的なアドバイスをしています。
やりながら学ぶ
さぁ、いよいよ1on1を始めます。
いくら準備をしても、実際に始めてみるといろんな不具合が出てきます。
ですから活動の様子を察知する仕組みを作りましょう。
そして、目標に向かってより良いものにするために試行錯誤送り返しています。
不具合を失敗と捉えず、学びに変えていきましょう。
プレイヤーからのヒアリング
1on1を受ける側から定期的にアンケートを取るようにします。
よかったこと
よくなかったこと
もっとこうしてほしい
などなど、上司には直接言いにくいことなどもアンケートによって把握することができます。
Googleフォームなどのツールを使うと非常にスムーズです。
アンケートはやりっぱなしにしてはいけません。
集計結果をシェアしたり、
「アンケートの結果をもとに、こうしました。」
など、何らかのリアクションを返すようにしましょう。
サポーター会議
月に1回程度、事務局や1on1をする側の人で、ミーティングを持ちましょう。
ここで、1on1をする側の悩みを共有しその解決策を模索しています。
あるいは、好事例も共有して横展開を図りましょう。
このプロセスが、個々のマネージャーの1on1スキルを高めるのに非常に効果的です。
アンケートの結果なども、この場で吟味するとよいでしょう。
浮き彫りになった課題に対しては、プチセミナーを開催したり、課題図書で学びを深めたり、メンバーでディスカッションしたり、
現実から学び、活動を調整していきます。
この場を充実させることが1on1を文化として定着させる最も大きなポイントになると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「いやそこまでしなくても、、」
「もっと気軽に、、」と思われたかもしれません。
しかし、考えてみてください。
貴社の社員の時間単価はおいくらですか?
時間単価に含めるべきは給料だけではありませんよね。
一度計算してみてください。
そして、定期的な1on1に費やす時間は、全員の総合計で何時間ぐらいになりますか?
セッションの時間だけではありません、
その事前準備や、フィードバックも含めて、
一年間で何時間ぐらいになるでしょう。
それらを掛け算すると総額でおいくらになりますか?
おそらく、かなりの額になると思います。
この大きな投資からはしっかりとしたリターンを得なければなりません。
ですから、全社的な導入をお考えでしたら、本気で考えるべきです。今回ご案内したようなステップをご参考にしてください。
事前の準備と、始めてからの微調整は不可欠です。
上手く運用すれば、1on1がもたらすメリットは、投資額を遥かに上回ります。
その為の考える手間と時間は、全体の投資額に比べたら極小さなものだと思います。
一緒に考えるパートナーとして、弊社にご相談いただけましたら幸いです。
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